分かってても言わないのが大人のルール
小学3年の師走、友達との話題は「サンタに何を頼むか」で持ち切りだった。
自由はあったが娯楽に餓えていたワイたちの間には”お互いが持ってないゲームソフトを買う”の暗黙の了解が出来ていた。
お前がマリオサンシャイン買うなら俺はピクミンにする。僕はビューティフルジョーにするから、君はといった具合。(後になんやかんやで全員名作は買ってた)
ワイは当時から性根がねじ曲がっていたので
微妙にダサいソフトをチョイスした。
ルイージマンション。うだつの上がらない2番手野郎が屋敷の清掃業に勤しむだけのゲーム。
これほっしぃわぁ〜!
姉貴には「マリオサンシャインにしとけよ…」とか言われた。情緒を理解しない女狐野郎がよ。俺たちにはヒモQより固い結束があんだよ。
テメーは黙ってぶつ森E+で魚釣りでもしてな!
岩下家では「お母さんがサンタさんに伝えておくからね」制度を採用していた。
俺はいかにルイージマンションが素晴らしいかを母に力説した。死んだ後も未練がましく現世にしがみついてるカスを額縁にぶち込んでやりたいンすよ。
「ゲームキューブのソフトね、分かった。お母さんがサンタさんに伝えておくからね。」
俺の勝ち。
陰キャゲームをよろしく頼むぜサンタの旦那ァ!
終業式の日、登下校が一緒だった上級生にサンタの話を振ったらとんでもないことを抜かしやがった。
「いやサンタってお父さんお母さんやで」
うそぉん…?いやでも確かにあんまりいい事を積み上げなかった年でもサンタの野郎は25日の朝には俺の欲しいものを持ってきた。
話に聞くだけが慈善事業髭爺の全てではないらしい。
まぁ正味サンタが誰でもええわ。
親に聞いて答えられても気まずいし。
ルイージマンションをくれるなら悪魔だろうが脂ぎった髭爺だろうが尻尾を振ろう。
俺の冬休みの全てがかかってるからね。
来たる25日の朝。
枕元にまぁまぁデカい赤い袋が置いてあった。
ルイージマンションやん!
あとなんかめっちゃ菓子入ってた。
予算余ったんかな、サンタって公益法人だったんだ…解ってるゥ〜!!
成し遂げたわ。さっそく遊ぼう。
ソフトに付いてる透明なペリペリをゴミ箱にポイ!
あれゴミ箱になんか入っとるやん。昨日サンタ来るから掃除しろって言われてピカピカにしたのによ。
なにこれ…値札とジョーシンのレシート?
あっ。
これはさすがにオカン。サンタisオカン。
だってこないだJoshinのカード探しとったもん。
ンなもん子供部屋に捨てんなやァ!
1階に降りると今から仕事らしいサンタは飯を食いながら言った。
「プレゼント欲しかったのきた?」
おうよ。菓子まで入ってたぜ。
お前あれユーストアで買っただろ。
知ってんぜ。Joshinの真横だもんな。
「遊ぶのもいいけど年末までに宿題終わらせなよ」
詰めの甘いサンタは仕事に行った。
しばらく言わんとこ…なんとなく…
来年は普通に言お。間違えられたら嫌だし。
サ゛ン゛タ゛さ゛〜ん゛!
今年はPS5で
お願いしま〜す!
おわり